事件報告


俺は2人の黒服によって部屋に連れ込まれた。彼らの目元はサングラスに覆われている。俺の身に起ころうとしてることに対し彼らは哀れんでいるのかもしれない。そうでないかもしれない。彼らの1人が俺を椅子に押し付けた。こんな殺伐とした場所にいることを後悔していると考えることで自分を誤魔化しながら、奴の手が震えているのを感じた。それとも俺自身が震えているのか。

どうして俺がこんなところにいるのかは分かっている。俺は妻を殺したのだ。間違ったことだとはわかっている、だが後悔はしていない。妻の首に手をかけた瞬間、俺は神だった。俺が悪魔でないことは確かだ。奴は新しくやってきた奴の方を見ていたからな。新たな囚人よ。我らの国に使える大いなる機会よ。ひと月の自由よ!

地獄だ。

医師が部屋に入ってきて、冷たい、金属の机の反対側に座った。「やあ、D-839229」彼は口元で作り笑顔をしながら言った。以前もこうだった。あのドグサレはきっと、俺が赴くことになる地獄を見るのを心待ちにしているんだ。

奴はステンレスの机に小さなブロンズの指輪を置いた。H.T.というイニシャルが光を反射し輝いている。特に変わったものには見えない。

「指輪をはめてください、D-839229」博士は言うと、ふんぞり返った。

博士の命令を拒んで撃たれる奴らを見てきたから、手を伸ばし、指に指輪をはめようとした。どうやっても指輪は指にはまらなかった。実際、小指にはめようとしているのに。

「気分はどうですか、D-839229?」博士が尋ねる。

俺は顔を上げた。くそったれ、こいつは俺をからかっているんだ、小汚い古びた指輪をはめさせようと。「けっ、腹が減ったね」俺は皮肉を返してやった。すると痛みが走った。俺は口から血を垂らして前のめりになっていた。何てことだ、何が起こったんだ?

歯が1本抜け落ちた。机の上に落ちて俺から逃げるように転がっていった。ややあって、他の歯もぜんぶそれについてった。俺が恐怖を感じながら眺めていると、歯は震え、もがき、形を変えた。次の瞬間、俺はいくつものミニチュアを目にした……サメ?

セキュリティに連行されると、俺の指は消えていった。独房にぶち込まれるころには両足のつま先がなくなった。連中が、俺を観察下に置くと説明したころにはハンマーヘッドが俺の両目を引き離した。

冷え冷えする独房に腰掛け、知り合いが監視カメラだけになると、内臓くらいの大きさのサメが喉から顔をだし、目をぎょろつかせた。あらゆるサメが飛び出した。俺の肝臓が、おれの肺が、おれのしんぞ

  • 最終更新:2013-09-30 15:07:45

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